在胎週数(母親のお腹の中にいる期間)が37週未満で生まれてきた赤ちゃんを「早産児」といい、生まれた時の体重が2500g未満の赤ちゃんを「低出生体重児」といいます。
体の機能が未熟だったり、集中治療が必要な赤ちゃんはNICUに入院しますが、治療が進み在宅で生活できる程度に状態が安定してくると、退院してご家族と一緒に暮らせるようになります。
「すくすく」では、NICUを退院するまでに準備しておくことやご家族にお知らせしたいことについてご紹介します。
1. NICU退院に向けた準備
環境
赤ちゃんのお部屋は、自然光が程よく差し込むところで風通しが良く、静かで落ち着ける環境が理想的です。
温度と湿度の目安
- 室温:冬は20℃位 夏は26℃~28℃
- 湿度:40~50%
夏の暑い季節
- 直射日光が赤ちゃんに当らないようにしましょう。
- エアコンや扇風機の直風があたる位置に赤ちゃんを寝かせないようにしましょう。
- 赤ちゃんは結構暑がりです。大人より新陳代謝が良いので、背中に汗をかいていないかをこまめに確認しながら、着衣で調整しましょう。
- 湿度が高すぎるとカビやダニが発生しやすくなります。お部屋や寝具などに湿気がこもらないように除湿や換気をして調整しましょう。
冬の寒い季節
- 暖房器具を使用するときは2時間ごとに換気を行いましょう。
- 乾燥しすぎると、インフルエンザなどのウイルスに感染しやすくなります。洗濯物を干したり、加湿器を使ったりして調整しましょう。
衣服
赤ちゃんの衣類は、保温調節、皮膚保護の役割があります。いつも清潔な衣服を着せてください。大人と一緒の洗濯で構いませんが、心配であれば赤ちゃん用の洗剤も販売されています。
衣類の素材など
- 木綿などの柔らかい生地で、皮膚を保護してくれる素材のもの
- 汗を吸い取る吸湿性があるもの
- 楽に着脱できるもの
- 洗濯しやすい丈夫なもの(新しい衣類は洗濯してから使用しましょう。)
- 乾きやすいもの
寝具
- 赤ちゃんのお布団は、専用の固めの敷布団を使用しましょう。
- 柔らかいお布団は、窒息のおそれがあるため避けましょう。
- こまめに日光に当て、洗濯して清潔に保ちましょう。
- 掛け物は、温度と湿度が保たれている場合は、バスタオルやタオルケット等で代用できます。
- 枕は必要ありませんが、タオルを四つ折りにして使用してもかまいません。
感染・危険予防
感染予防
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赤ちゃんは病気やばい菌に対する抵抗力が弱いため、周りの大人が予防接種を済ませ、手洗い・うがいを行ってから赤ちゃんに接するようにしましょう。
危険予防
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目が行き届かないところではうつぶせ寝にしないようにしましょう。少しでも赤ちゃんから離れる時は、必ず仰向けに寝かせましょう。
赤ちゃんの近くに設置が不安定な家具や落下の危険がある物がないか確認しましょう。
上のお子様にも目を向けましょう。ベビーベッドを使用すると赤ちゃんも安心です。
育児用品
それぞれの育児用品の特徴を確認し、季節に合わせたものを準備しましょう。
肌着・衣服
- 肌着 5~7枚(季節に合わせた短肌着・長肌着を必要に応じて用意しましょう。)
- 衣服 3~5枚(季節に合わせた衣服を必要に応じて用意しましょう。)
- 帽子(あると便利です。)
- おくるみ(バスタオルでもよいです。)
おむつ交換
- おむつ(サイズがあったものを用意しましょう。)
- おしりふき
- ビニール袋(排泄物の処理に使用します。)
授乳
- 哺乳瓶と乳首(2セットほどあるとよいです。)
- 粉ミルク
- 哺乳瓶消毒セット(哺乳瓶ブラシと消毒方法による必要器具を用意しましょう。)
- 授乳クッション(あると便利です。)
沐浴・衛生用品
- ベビーバス
- ベビーソープまたは沐浴剤
- バスタオル
- ガーゼハンカチ(10枚ほど)
- 湯温計(あると便利です。)
- 綿棒
- 爪切り
- 体温計
- ベビーローション・ベビーオイルなどの保湿剤(肌にかさつきなどを感じる時)
寝具
- ベビー布団セット(敷き布団は専用の固めのものを使用)
- シーツ
- ベビーベッド(あると便利です。レンタルする方法もあります。)
おでかけ
- チャイルドシート(車に乗せる時には必要です。レンタルする方法もあります。)
道路交通法により、6歳未満の乳幼児にはチャイルドシートを着用することが義務付けられています。つまり、生まれた産院を退院する時からチャイルドシートの着用が必要になります。
新生児の体は非常にやわらかく柔軟性がありますが、後ろからの衝突事故やもらい事故の被害に遭ってしまった場合は、赤ちゃんを抱っこしている大人も大きなダメージを受けるため、赤ちゃんを守ることができなくなります。必ず、利用する車の座席にチャイルドシートを正しく装着し、赤ちゃんに着用させましょう。また、全ての座席でシートベルトの着用が義務付けられています。赤ちゃんを育て、これからの成長を見守っていくためにも、ご家族もシートベルトを着用しましょう。
2. 知ってほしい赤ちゃんの体のこと
成長や発達
早産児の成長や発達については、実際に産まれた日ではなく、出産予定日を基準に考えていきます。これを修正月齢といいます。つまり、出産予定日より2ヵ月早く産まれてきた早産児は、生後2ヵ月で修正月齢0ヵ月、生後6ヵ月で修正月齢4ヵ月と考えて評価します。生まれた時からの月齢で評価して、心配することはありません。
より在胎週数が短く、より出生体重が少ない赤ちゃんでは、修正月齢で評価しても、成長や発達がゆっくりな傾向はあります。しかし、個人差はありますが、ほとんどの児はゆっくりと在胎37週以降に生まれた児に追いついていきます。母子手帳の乳児身体発育曲線上にグラフを描きますが、正常域に入っていることが重要なのではなく、産まれたときからの成長をトータルで見ていくことが肝心です。
未熟児貧血
赤ちゃんはママから血をつくるための鉄分をもらって生まれてきますが、そのほとんどを妊娠後期に受け取ります。しかし、早く生まれてきてしまうと、十分な鉄分をもらえないので、赤ちゃんの体内に貯蔵される鉄は少なくなります。そのため、生後3ヶ月頃から鉄欠乏性の貧血になりやすく、退院後もしばらくは、鉄剤の内服を必要とする場合が多くあります。
妊娠中・授乳中に、少しでも多くの鉄分を赤ちゃんに与えるためには、鉄を多く含んだ食品 (例:赤身の肉、魚、レバー、豆腐、小松菜、ほうれん草、納豆、ひじきなど)を積極的に摂取することをおすすめします。
未熟児骨代謝疾患(骨塩減少症、未熟児くる病)
骨の形成に必要なカルシウムやリンも、妊娠後期に母体から胎児に移行するので、早く生まれた赤ちゃんは、これらが不足して骨がもろくなることがあります。その場合は、NICU入院中にカルシウムやリン、ビタミンDといった骨の形成に必要な栄養素の予防的な補充を始めることがあります。また、退院後は、母乳やミルクからのカルシウムやリンの摂取が主体になりますが、ビタミンDの補充が必要になる場合もあります。
慢性肺疾患
未熟な肺に、人工呼吸器による機械的刺激や出生前後の感染などの影響で肺が傷み、その後も肺機能の低下が続いてしまっている疾患です。退院時には明らかな症状のない赤ちゃんから、のどが常にゼロゼロしていたり、退院後も在宅酸素療法や薬が必要な場合など、程度にはかなり個人差があります。肺は生後も成長するため、一般的に退院後は症状が徐々に軽快し、ほとんどの場合は、3歳頃までには治ります。 ただし、慢性肺疾患のある赤ちゃんは、気道感染症の際に症状が強くなる傾向がありますので、早めにかかりつけ医を受診するようにしましょう。
脳室周囲白質軟化症
小さく生まれた赤ちゃんは、脳への血流調節能が未熟なため、出生前後に具合が悪い時期があると、脳へ血液が十分に供給されず、脳組織が部分的に傷むことがあります。特に脳室の周囲にある白質という部分が好発部位なのですが、ここには運動神経などが束になって存在しているため、脳性麻痺の原因となりやすく、成長する過程で手足の硬直などの症状が現れてくることがあります。
NICUで頭部超音波検査、頭部 MRI、脳波などの検査を行いますが、検査で異常がなくても、フォローアップ外来経過中に次第に症状が見られ始め、リハビリが必要となる場合もあります。なるべく早期に発見し、早期に治療を開始することが症状改善に有益なので、定期的にフォローアップ外来での診察を受けましょう
鼠径ヘルニア
腹筋が弱いために、腸が足の付け根の皮膚の下にはみだしてしまう病気で、早産児・低出生体重児に多くみられます。成長して腹筋が強くなるに従い、自然に治ることもありますが、腸がなかなか引っ込まない場合には腸が傷んでしまうこともあるので手術が必要です。
ご自宅で引っ込まなくなり、緊急入院・緊急手術ということもあり得るので、見つけ次第かかりつけの医師から小児外科の専門の医師を紹介してもらうなどして、ご自宅での対処法、手術の時期について相談しましょう。
臍ヘルニア
臍帯が付着していた部分から、腸が腹部の皮膚の下にはみだしている状態です。腹筋が弱いことが主な原因なので、早産児・低出生体重児に多くみられます。一般には、1歳までにほとんどのお子さんが良くなりますが、極端に大きな臍ヘルニアでは皮膚過伸展の結果、臍突出(でべそ)が残り、見た目にもあまり好ましくありません。
一般的には突出した臍と消化管を、手を使ってお腹の中に戻し、綿球等を臍の中に入れて、左右の腹壁皮膚を引き寄せた状態でテープ等で固定する圧迫固定法が用いられています。効果的に、また、テープかぶれや交換時の剥離刺激による皮膚の発赤等を、できるだけ少なくするような素材選択やコツ等がありますので、必ず医師(小児科、小児外科または形成外科)に相談しましょう。
2歳を超えても直らない場合には、手術の適応となる場合もあります。小児外科または形成外科に相談しましょう。
吐乳
退院後1ヶ月目までに最もママを悩ませるのは吐乳(とにゅう)です。機嫌が良く、哺乳する力が普段と変わらない状態で体重増加が良好ならば、溢乳(いつにゅう)の可能性が高いでしょう。溢乳は生理的な嘔吐ですので、様子を見ていただいてかまいません。通常は、次第に頻度が少なくなっていきます。長期に大量の嘔吐が続く場合や次第に頻度が増す場合、体重の増えが悪い場合は、胃内食道逆流症や幽門狭窄症等の疾患の可能性があります。かかりつけ医師に相談してください。
便秘
そもそも、赤ちゃんの排便の回数は児によって大きく異なり、 哺乳毎に出る児もいれば数日に1回の児もいます。毎日1回は出なければいけない!というものではありません。また、経過と共に回数も変化します。体重がきちんと増えて、お腹が張って苦しそうでなければ、3日目くらいまではそのまま経過を見てもかまいません。
ただし、早産児・低出生体重児は一般的にお腹が張りやすいので、肛門刺激や浣腸をしばらく行うことがよくあります。肛門刺激等をすることによって、それが癖となって、刺激をしないと排便が出なくなるということはありませんので、ご安心ください。むしろ定期的なガス抜きや刺激で排便リズムがつきやすくなります。
3. 子どものケア
子どものケア
抱っこ
授乳時、赤ちゃんが激しく声を上げて泣く時や反り返りが強い時などの抱っこの仕方についご紹介します。
観察のポイント
綿棒浣腸の仕方
お腹のマッサージをしても効果がなく、赤ちゃんのお腹が張っている、機嫌が悪い、吐くなどの症状がある場合は、綿棒浣腸で腸を刺激してみてください。
浣腸の仕方
3日以上排便がない場合や、綿棒浣腸で効果がない場合は、いちじく浣腸で腸を刺激してみてください。
服薬
ピロリン酸第二鉄シロップ(インクレミンシロップなど)は、赤ちゃんの体内に欠乏した鉄分を補給して、貧血を治すためのお薬です。
臍ヘルニアの固定方法
準備するもの
①綿球 ②フィルムドレッシング材(創傷被覆材) ③サージカルテープ(必要時)
*綿球やフィルムドレッシング材は、薬局やドラッグストアなどで市販されています
*フィルムドレッシング材は、ロールタイプ・個包装タイプどちらでもかまいません
固定をする場合は、授乳後は避け、赤ちゃんが機嫌がよいときに行いましょう。
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5.皮膚のひきつれなどがないか、確認します。
- そのままお風呂に入れます。剥がれるまでは取らずに様子をみて、1週間おきに交換します。
- 赤ちゃんは皮膚が弱いため、フィルムドレッシング材を剥がす時は、ベビーオイルを使用して剥がすとよいです。
注意事項
皮膚が赤くなった場合は、固定を中止して下さい。
赤ちゃん体操
赤ちゃんの骨や筋肉に適度な感覚刺激を与えて成長を促し、赤ちゃんとのスキンシップにもなる簡単な体操をご紹介します。
離乳食について
月齢にあったおもちゃ、遊び
早産の赤ちゃん、低出生体重の赤ちゃんの発育・発達を促す遊びをご紹介します。
4. 医療・福祉制度の活用
5. ご家族をサポートする機関
6. 災害・緊急時に備えて
7. 療育・保育・教育
8. ママ・パパ達の活動紹介
鹿児島リトルベビーサークル ゆるり
鹿児島県内で活動をしているサークルです。
(鹿児島市内で対面での活動を行っていますが、県内の離島や遠方の方も参加しやすいよう、オンライン(Zoom)でのおしゃべり会も行っています。)
産前産後のこと、妊娠中のこと、NICU・GCUの入院中のこと発達のこと、療育・リハビリのことなど同じような経験をしたママ・パパ達とお話をしてみませんか。