人工呼吸器の電源確保について
在宅で医療機器を動作させるためには「電気」が必要になります。このため、災害時において電気を確保することは必須の課題になります。多くの人工呼吸器には内部にバッテリーが備わっており、この内部バッテリーは3時間から15時間程度の容量を持ちます。
災害が発生した場合、または、災害が予測される場合、人工呼吸器の取り扱い業者が人工呼吸器の内部バッテリーを各家庭に届ける体制が整備されています。しかし、災害の規模や配布の優先状況からバッテリーの供給を受けられない場合が予想されます。 このため、自助としての電源確保をお勧めいたします。
電源確保で使用される以下の電源については、人工呼吸器等のメーカーや電源供給メーカーにおいて精密医療機器(人工呼吸器等)への使用を推奨していないことをご承知ください。緊急時の電源確保でやむを得ない場合に、使用者の責任で使用する方法としてご紹介しております。
人工呼吸器の外部電源の種類について
外部電源には主に、①蓄電池または蓄電器(ここでは蓄電池で統一します) ②発電機 ③自動車 があります。
蓄電池
平常時に蓄電池に充電しておくことで、災害時など電気が必要な時に使用することができます。通常のメンテナンスはさほど必要ではありませんが、バッテリーは経年劣化があるため、定期的な交換が必要になってきます。 蓄電池は管理と安全性の面からお勧めいたします。
発電機
発電機に燃料(ガソリンやカセットボンベ)を入れ、動作させることで電気を供給できます。発電機は定期的なメンテナンスや燃料の管理等が煩雑になります。また、発電機の稼働中の一酸化炭素中毒に注意する必要があります。 発電機は管理と安全性の面からお勧めいたしません。
自動車
自動車のシガーソケットから得られる直流の12Vを交流に変換して使用する必要があります。また、インバーターは正弦波のものを使用する必要があります。ハイブリット車の場合は、走行用バッテリーにインバーターを接続することで電気を確保することができます。
蓄電池の選び方
日常の管理と安全性の面より蓄電池をお勧めする観点から、蓄電池の選び方をご説明いたします。
電源確保で使用される以下の装置については、人工呼吸器等のメーカーや電源供給メーカーにおいて精密医療機器(人工呼吸器等)への使用を推奨していないことをご承知ください。緊急時の電源確保でやむを得ない場合に、使用者の責任で使用する方法としてご紹介しております。
蓄電池の種類
蓄電池には大きく医療用と非医療用とに分類できます。
医療用蓄電池
医療機器を患者(療養者)に使用する目的で電気を供給することを想定しているため、絶縁性と漏れ電流などの安全性が各種規格に準拠・適合しています。
製品は各種規格に準拠・適合していますが、人工呼吸器メーカーは他社の製品への接続は推奨していません。
品名 | 性能 |
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カフベンテックジャパン株式会社 CV600 |
容量:568.32Wh 出力:AC2口(定格600W)、USB(6口)、DC(1口) 計9口 重量:5.4Kg 寸法(幅×高×奥):260×175×172mm 参考価格:269,500円(税込) ※R6.8発売予定 |
あくまでも一例として特定の機種を挙げていますが、推奨しているわけではありません
非医療用蓄電池
医療機器を患者(療養者)に使用する目的で電気を供給することを想定していません。このため医療用としての規格に準拠・適合していません。
品名 | 性能 |
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株式会社やまびこ SLG2300 |
容量:2264Wh 出力:AC(3口)定格14000W USB(A:4口、C:2口) 重量:27Kg 寸法(幅×高×奥):574×259×369mm 参考価格:385,000円 |
Jackery ポータブル電源 2000 Pro |
容量:2160Wh 出力:AC(3口)定格2200W USB(A:2口、C:2口) 重量:19.5Kg 寸法(幅×高×奥):384×307.5×269mm 参考価格:228,000円 |
Jackery ポータブル電源 1000 Pro |
容量:1002Wh 出力:AC(3口)定格1,000W USB(A:2口、C:2口) 重量:11.5Kg 寸法(幅×高×奥):340×255×262mm 参考価格:149,800円 |
Jackery ポータブル電源 708 |
容量:708Wh 出力:AC(2口)定格500W USB(A:1口、C:1口) 重量:6.8Kg 寸法(幅×高×奥):299.7×190.5×191.5mm 参考価格:84,500円 |
EcoFlow DELTA Pro | 容量:3600Wh 出力:AC(5口)定格3000W USB(A:2口、C:2口) 重量:45Kg 寸法(幅×高×奥):285×635×416mm 参考価格:308,000円 |
あくまでも一例として特定の機種を挙げていますが、推奨しているわけではありません
蓄電池の選び方
(予備知識)
- A:電流
- V:電圧(一般家庭は100V)
- W:有効電力(実際に電気機器で使用される電力:W=V×A)
- Wh:消費電力(定格電力×使用時間)
- Ah:電流×使用時間
- AC:交流
- DC:直流
- Wh:Ah×V
出力波形から選ぶ
医療機器は商用電源を駆動源としており、安定した電源供給である「正弦波」を用いています。このため、精密機器である人工呼吸器は、安定した動作を確保するために必ず「正弦波」出力のものを使用してください。
使用する人工呼吸器などの必要電力で選ぶ
例えば、人工呼吸器トリロジーやトリロジーplusの有効電力は最大で210Wになります。人工呼吸器のみを動作させるためには、最低でも210Wより大きな出力を持つ蓄電池が必要になります。また、人工呼吸器だけでなく、加温加湿器や吸引器、酸素濃縮器を動作させるとなると、更に大きな出力を必要とします。蓄電池の電力消費量を最小限にするためには、給電する機器の優先順位をあらかじめ決めておく必要があります。
容量で選ぶ
人工呼吸器など必要とする機器の必要電力が決まれば、蓄電池で賄いたい時間から容量を決定します。
(例)人工呼吸器のみ210Wを10時間動作させたい場合
210W×10時間=2100Whとなり、蓄電池の容量が2100Whより大きいものを選ぶ必要があります。
人工呼吸器トリロジーの有効電力は最大で210Wになりますが、安定した動作時の有効電力は50W前後を示す場合があるため、実際に必要とする容量は2100Whより小さくて済む場合もあります(使用環境や人工呼吸器の設定等で変化します)。
充電方法で選ぶ
基本的には家庭用の商用電源(100V)で充電するのですが、自動車のシガーソケット、ソーラーパネルを利用することができるタイプのものもあります。
参考サイト
上記電源確保に係る情報は、公益社団法人鹿児島県臨床工学技士会から御提供いただきました。
蓄電池の使用方法等については、鹿児島県臨床工学技士会でも情報提供を順次行っていくそうですので、下記のホームページを参考にされてください。