口から食べ物、水分、薬などを摂取できない場合に、鼻から管を通して流動物を胃に送り栄養をとることをいいます。 一般には、鼻から管を通す経鼻経管栄養法が用いられています。 |
まず栄養チューブを入れます!!
準備するもの
栄養チューブ 固定用テープ
マジック 注入用シリンジ 聴診器
1. チューブを入れる長さを決めマジックで印をつけましょう。(図のように測ります。)
● 鼻から耳までの長さと顔を横に向け耳からみぞおちまでの長さをたしたものが挿入長さです。
● 挿入長さと同じ長さになるように、チューブの先端から測定し印をつけます。
2. 次の手順に沿って挿入します。
①口の中や鼻水などの分泌物は取り除いておきます。
②仰向けにし、リラックスできるように少し身体を起こしたりします。
嫌がるときは、手や身体が動かないようにタオルで巻いたり、他の人に押さえてもらったりしてもらいます。
③鼻から静かにチューブを挿入し、鼻の奥まで入ったら一旦止めて、唾をゴクンと飲むタイミングに合わせて
チューブを入れていきます。むせ込んだり、顔色が悪くなったりする場合は、すぐに抜いて、落ち着いてから入れ直します。
④印のところまで入ったらテープで固定します。
⑤チューブの先端が胃の中に入っているか、チューブに注射器をつけ引いてみます。胃内容物が引けてくればOK!!
何も引けない場合は、聴診器をみぞおちの上に置き、注射器に1ml 位空気を入れ、チューブから、その空気を入れてみます。
『グー』とか『ボコボコ』という音が聞こえればOK!!
※管がしっかり胃に入ってるか確認するための胃の音と、間違って肺に入っていないかを確認するため、左右の下肺部で、音の確認をします。(3点確認、下の図参照。青色→胃、赤色→肺)
チューブの交換は2週間くらいで交換し、左右の鼻に交互に入れ替えます。
鼻の固定テープは、潰瘍の防止のため1日1回は、場所をかえて張り替えます。
ちょっとした“こつ”教えます。
★チューブを入れるとき、頭を少し前に倒すと食道に入りやすくなります。
★チューブが入りにくい場合は、先端を氷水につけて硬くすると入りやすくなります。
★最初はゆっくりと挿入し、チューブの先がのどを過ぎたら手早く入れます。
注意点
●吐き気が出たときは、おさまってから挿入してください。
●チューブが口の中にもどっていたり、のどの奥でぐるぐると巻いている場合もあります。空気の音が聞こえない場合は、口をあけて観察してください。
そして注入です
準備するもの
注入物 注入パック・滴下筒 or 注入用シリンジ
白湯用シリンジ 白湯
次の手順で行います。
① 注入物は、体温程度に温めておきます。(常温でOK)
→胃に直接入ります。熱すぎると胃潰瘍、また冷たすぎると下痢などの原因になります。冷蔵庫から出したすぐのものは使わないようにしましょう。
②分泌物がある場合は事前に吸引しておきます。また状態の観察をします。
姿勢は座位・または上体を高くした仰向け、または右向きが良い(体位が難しい場合は、楽な体位を検討していきましょう。)
③ 注入前には、チューブが胃の中に入っているか必ず確認し、次に胃の中に前回の注入が残っていないか、量と性状をみます。(表1を参考)
④ 注入物を注射器に吸い、ゆっくり注入します。
※NICUでは分注することが多いですが、自宅退院後などは注入パックを使用し、30分ほどかけて、注入する事もあります。
・『1分間に30滴→10秒で5滴→1時間で100ml』
⑤ 注入し終わったら、5mlの注射器に白湯を吸い上げて注入します。
(チューブの詰まりや、腐敗の原因となる場合があります。)
⑥ 後片付けをします。注入器などは、ミルトンなどで消毒します。
※お薬がある場合は、注入前に入れてもOKです。看護師に相談して下さい。
注意点
● 注入中に喘鳴が強くなった場合は、一旦止めて嘔吐に注意しながら、口腔内を軽く吸引してください。
● 注入中に嘔吐した場合は、誤えんの危険性があります。すぐに注入を中止し、顔を横に向けます。口腔・気管内の吸引をしっかり行ってください。
● 注入中に顔色が悪くなったり、呼吸が苦しくなった時は、少し待って落ち着いてから注入を再開します。誤えんしているようなら嘔吐時と同様の対応をします。
● 注入中に栄養チューブが抜けかかったり、抜けてしまった時は、すぐに注入を中止して抜きましょう。嘔吐時と同様な対応をし、落ち着いたらチューブを入れて注入を再開します。お子さまが自分で抜く可能性がある場合は、ミトン手袋を着けるなどして、注入中は目を離さないようにしましょう。
● 熱がでたり痰が汚くなったりしたら(黄色い痰)、早めに受診してください。
【表1】前吸引の内容別対処法
状況 | 判断 | 対処 |
何も引けてこない |
① チューブの先端が胃壁に接している可能性があります。 ② 胃内容物が消化されています。 |
① チューブの位置が正しいかもう一度確認します。 |
空気がたくさん引ける | 普段から空気を飲み込んでいる場合があります。空気は、嘔吐の原因になり、胃にもどすと嘔吐を誘発しやすくなります。 |
引けた空気は全部捨てます。 排気(げっぷ)をすることを習慣づけてください。 |
胃内容物が透明または、白い液である |
胃液です。体内の電解質を保つために大切なものです。 どのくらい引けますか? |
① 胃の中に戻します。 ② 少量なら注入物の量の変更はしなくてもかまいません。 ③ 多いときは、注入量から胃内容量を引いた量を(差額)注入します。 |
胃内容物が注入物または、食べたものである |
まだ消化できていません。 どのくらい引けますか? |
引けたものは戻してください。 30分~1時間以上待っても消化できていない時は、差額注入します。 ↓ このような状態が続くと脱水の原因となります。医師に相談して消化しやすいように薄めたり、湯冷まし・ソリタ水などで水分を補います。 * 引けた量で医師から指示のある時は、それに従ってください。 |
胃内容物がコーヒー様または血液が混入している |
消化管のどこかから出血している可能性があります。 栄養チューブの先端で胃の粘膜を傷つけたのかもしれません。 ストレスかもしれません。 鼻出血を飲み込んだことも考えられます。 胃などからの出血が多いと黒い色の便が見られます。便の色に注意します。 |
引けたものは全部捨てて、注入物を定量入れます。 ↓ 出血が続く時は、胃の負担を少なくして水分を補給するために、湯冷ましやソリタ水を入れます。その後も続く時は、1回注入を中止して胃を休めます。 ↓ 量が多かったり何回も続いたりする時は、早めに受診し医師の指示を受けてください。 |
胃内容物が緑色または、濃い黄色である |
胆汁です。 腸の動きが悪い可能性があります。 お腹は張っていませんか? 排便状態は? |
引けたものは全部捨てて、注入物を定量入れます。 |
※退院後の分からないことや不安なことは、かかりつけ医や外来看護師、訪問看護師へ相談して下さい。
(鹿児島市立病院からご提供いただきました。)